睡眠のサイクルを知る1―セロトニンの働き
概日リズムと体内時計
不眠症を治すために、そして質のよい睡眠をとるために、私たちの身体にそなわっている「睡眠サイクル」を知っておくことが役に立ちます。
人にはおよそ24時間サイクルの「覚醒と睡眠のリズム」があります。
このリズムは長い年月をかけて人の身体に備わったものなので、がんばって意志の力で変えようとしても、うまくいきません。
できるだけこの自然のリズムに添うことが「よく眠る」ためのもっとも効果的な対策です。
<起きて活動する→眠って休憩する>を繰りかえすリズムのことを「概日リズム」(英語:サーカディアン・リズム)と言います。
人間の場合は、この概日リズムが24時間より1時間長い25時間だと言われています。
これはドイツの研究者が自ら光を遮断した状態で1週間過ごして睡眠、覚醒などのリズムが24時間ということを発見したのだそうです。
概日リズムの時間を計っているのが「体内時計」です。
体内時計は脳の視床下部にある視交叉上核(しこうさじょうかく)という非常に小さい領域にあります。人間が持つ体内時計のことを「フリーラン」といいます。
朝の覚醒リズムをつくるホルモン「セロトニン」
では体内時計が知らせる時間が、具体的にはどう覚醒や睡眠に結びついているのでしょうか。
それには脳内の神経伝達物質である、「セロトニン」と「メラトニン」というホルモンが関係しています。
体内時計がホルモンの分泌をうながして、そのホルモンが自律神経の働きを覚醒モードにしたり、睡眠モードにしたりするのです。
朝、目が覚めて太陽の光をあびると、体内時計が「1日の始まり」にリセットされて、覚醒ホルモンの「セロトニン」が分泌されます。
セロトニンの作用で脳の働きが活性化され、体温や心拍数も上がってくると、ふとんの中でじっとしている気がしなくなります。
朝食を食べたり、身体を動かしたりすることでさらにセロトニンの分泌が活性化して、完全な覚醒モードに入ります。
夜の睡眠リズムをつくるホルモン「メラトニン」
この覚醒モードが14〜15時間続くと、体内時計は睡眠ホルモンの「メラトニン」を分泌しだします。
メラトニンは脳の興奮をしずめて、体温や心拍数、血圧を下げてさかんに「さあ、もう眠りましょう」という信号を送ってきます。
昼間のセロトニンの分泌が活発なほど、夜のメラトニンも分泌も活発になることが分かっています。
このメラトニンの分泌をさまたげるのが「夜もかなりふけているのに、昼のような行動をする」ことです。
明るい光を浴びたり、神経が興奮したりするような仕事や遊びを続けると、体内時計に「?」マークがついてメラトニンがスムーズに分泌されなくなります。
青色波長を持った光を夜間に浴びると脳が覚醒します。
青色波長を持つ光は電子機器によって発せられます。夜間にテレビやパソコンを見ていると眠りにつきにくくなります。
特に最近ではスマホを肌身離さず見ているという人も多いかと思いますが、スマホの青色波長を持った光は脳を覚醒させ、メラトニンの分泌を妨げて不眠の原因になりますので要注意です。
昼の活動をしだいにトーンダウンしていくと、夜10時ころからメラトニンの分泌がはじまって、夜中2時ころにピークを迎えます。
その後メラトニンの分泌がしだいに少なくなっていくにつれて眠りが浅くなり、朝の光で目覚めるとともに分泌がストップします。
毎日1時間の時差を調整する同調因子
そもそも体内時計(フリーラン)が25時間であるのに対して、地球の自転、つまり1日は24時間です。
1時間の差があるわけですが、10日間で10時間の差になります。
ではこの差を身体はどのように調整しているのでしょうか?
それは体内時計(フリーラン)と地球の自転24時間の周期を同期してくれる「同調因子」の働きがあるからです。
「同調因子」とはどんなものでしょうか?それは外的な要因になります。
例えば太陽の光、時刻をチェックすること、毎日の学校や仕事の予定、運動の習慣などです。
太陽の光で言うと冬季の日照時間が極端に短い国では不眠症やうつ病が多いというデータがあります。
次はこちらへどうぞ!
睡眠のサイクルを知る2―レム睡眠とノンレム睡眠