睡眠薬の歴史(2)

睡眠薬の歴史(2)

1960年代には「バルビツール酸系睡眠薬」に代わって「安全な」睡眠薬である「ベンゾジアゼピン系」睡眠薬が登場してきました。

 

ベンゾジアゼピン系は大量摂取で死に至ることがなく、安全であるということで急速に支持され広まっていきました。作用の持続時間によって様々な種類、亜流のものが発売されています。

 

現在主流でも副作用がやや心配

 

ベンゾジアゼピン系は、現在でも睡眠薬の主流と言える存在ですが、副作用については多く指摘されてきました。

 

ふらつきや転倒の恐れがあります。短期間は有効ですが、1〜2週間の使用の後、耐性が形成されるため、長期間の使用はできません

 

また中止すると離脱症状が出ることがあり注意が必要です。使用は30日未満にすべきであると警告されています。

 

それでも日本では処方箋発行ベースにて睡眠薬の65%はベンゾジアゼピン系です。

 

改良型は副作用抑え目

 

ベンゾジアゼピン系の副作用を改善したものが「非ベンゾジアゼピン系」です。

 

ふらつきや転倒の恐れは改善されていますが、長期間の使用はできないこと、中止後 離脱症が出るという点ではベンゾジアゼピン系と変わりません。

 

日本では処方箋発行ベースにて睡眠薬の30%は非ベンゾジアゼピン系です。

 

これまでに述べた睡眠薬はいずれも「GABA受容体作動薬」というもので、GABA(ガンマアミノ酪酸)は脳の興奮を抑える働きをする神経伝達物質です。GABAによって脳の活動を休ませて睡眠に導くというものでした。

 

作用させる方法を見直して安全性アップ

 

2010年代に入ってこれまでの「GABA受容体作動薬」とは全く異なる作用をする睡眠薬が登場してきました。

 

ひとつが「メラトニン受容体作動薬」です。

 

人間が眠くなるのは、脳の視床下部から「メラトニン」というホルモンが出るためです。

 

では、メラトニンが出る受容体を刺激すれば眠りにつけるのではないか、という研究から開発されたのがこの「メラトニン受容体作動薬」です。

 

「メラトニン受容体作動薬」は他の睡眠薬よりも作用は強くないのですが、大きな副作用はなく安全性が高い睡眠薬です。

 

覚醒を阻害するという着眼点

 

もう一つの睡眠薬は「オレキシン受容体拮抗薬」です。

 

オレキシンとは覚醒をつかさどると言われている神経ペプチドであり、オレキシンが欠乏すると突然発作のように眠ってしまうナルコレプシーという病気になります。

 

オレキシンをわざと阻害することによって睡眠へと導く薬が「オレキシン受容体拮抗薬」です。

 

「オレキシン受容体拮抗薬」は2014年11月に発売されたばかりの新しい薬ですので、臨床効果は確立されていません。

 

安全で長期間使用できる睡眠薬として期待が高まっていますが、まだ結論はこれから、という薬です。

 

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