不眠症が及ぼす影響―睡眠負債

不眠症が及ぼす影響―睡眠負債

日本人は総じて睡眠不足である、と言われています。

 

アメリカ・ミシガン大学の調査では、日本人の平均睡眠時間は7時間24分で、世界100国で一番短かったとのことです。

 

国の調査では、2008年には睡眠時間が6時間以下の人は30%未満でしたが、2015年には40%近くに急増しています。

 

睡眠不足は国民的現象と言えます。

 

睡眠不足、というと1日3時間くらいの睡眠をイメージするかもしれません。

 

しかし1日6時間ほど眠っており、自分は問題がないと思っている人でも、実は睡眠不足のリスクはあるのです。

 

睡眠負債は睡眠以外で返済できない

睡眠不足が重なると心身にどういう影響があるかを考えるとき、睡眠医学では「睡眠負債」という考え方をします。

 

これは私たちが「睡眠不足がたまる」と言っていることとよく似ています。

 

睡眠不足がたまると、脳はその不足を取り戻そうといろいろな場面で「眠気」をもよおして睡眠を誘います。

 

睡眠負債が大きくなればなるほど、それを返済させようとする圧力が高まり、脳はさかんに「眠れ」という指令を出すようになります。

 

授業中や会社での居眠り、電車でのうたた寝などは、夜寝る以外の場面で睡眠負債を返済する行為です。

 

睡眠負債は、仕事や家事の生産性の低下を招いたり、「ガン」「心臓病」「糖尿病」「アルツハイマー」発症のリスクが高まってしまう恐れがあります。

 

睡眠負債の特徴は「眠る以外の方法で返済することはできない」ということです。

 

気合を入れたり、手の甲をつねってみたりしても、一時的に眠気を遠ざけるだけですぐにまた「借金取り」が現れます。

 

睡眠負債は一括返済できない

睡眠負債のもうひとつの特徴は、毎日の睡眠不足を週末にたっぷり寝ることで解消するとか、徹夜をしても翌日たっぷり寝たらOKとは言いきれないことです。

 

これは確かに睡眠負債を減らす効果はありますが、睡眠は約24時間の体内時計のリズムに合わせてとることが求められているので、まとめて返して帳尻を合わすということができないのです。

 

徹夜をした後にいつもの倍眠ろうとしてもそうはいきません。

 

いつもよりいくらか長く眠れたとしてもやがて目が覚めて、寝不足の感じが数日間続くというのがふつうです。

 

睡眠負債を抱えているかどうかは、週末など朝早く起きなくて良い日に目覚ましを掛けず、部屋を朝の光が入らないように遮光して時間を気にせず寝るとどうなるかで分かります。

 

通常起きている時間よりも2時間以上寝過ごした場合は、睡眠負債がある、と判断したほうが良いでしょう。

 

少しずつ返済するには

睡眠負債は少しずつ返して、体内時計が正しいリズムで働くように修正していかなければなりません。

 

毎日少しずつのうたた寝や昼寝は睡眠負債の返済にはたいへん効果的です。

 

昼寝は夜の睡眠の約3倍の効果があると言われています。

 

昼寝は15分〜20分が効果的です。

 

昼寝は疲労回復、生産性の向上に役立ちます。

 

30分以上の昼寝は熟睡モードになってしまうため、目覚めても眠気が続くことになりますし、夜の睡眠のリズムを崩すことにもなります。

 

概日リズムを考えると回復に効果的

人には24時間+αの周期の睡眠リズムがあります。

 

この「α」は30分くらいとも1時間くらいともいわれています。

 

この周期は「概日リズム」といわれています。「概日」はおおよそ24時間という意味です。

 

実際の1日の時間とαの誤差は毎朝太陽の光をあびることでリセットされます。

 

現代人の生活は人工照明の発達などで自然のリズムを軽視することが多くなって、睡眠負債をためることも増えています。

 

睡眠負債はたんに睡眠時間のトータルの帳尻を合わせということではなく、「リズムを取り戻せ」という脳の指令でもあります。

 

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